詩集・1971 -monologue- [ふじたふう詩集]
monologue
傾斜する明日をかかえて走り続ける
ひとつの幻想がある
脳の垂直軸にかかる
モーメントは常に
零であることを証明する
閉じた輪がある
辞書のすきますきまから
丹念に符号を拾いながら
蛾の紋を読む
ひとりの昆虫学者がいる
浮上する刻は
ガラス玉のように
すきとおっていて
蝙蝠(オポチュニスト)の手のひらは
いつも冷たい
球体の内部にはりついて
その中心をみつめると
(あたしは四肢を縮め)
(卵形のかたまり)
(落ちるのは夢)
(夢の落下速度は)
(どんな演算因子を)
(必要とするだろうか)
少年への淡い追憶
静かに回る
機関車のロマンチシズム
傾斜した明日をかかえて
ひとつの逃走がはじまる
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