詩集・1971 -恋唄- [ふじたふう詩集]
恋唄
きみが
いまにも泣きそうな顔をして
擦り寄ってくるから
ぼくはまた
なにかを
忘れていたことに気づくのだ
そんなにも幻に耽る
竪琴のような愛
透きとおる
こだまの悲鳴を
ぼくは聞いてしまったので
明日がもう一度現れることなど
信じられない
きみがいまにも泣き出しそうな顔をして
すり寄ってくるので
ぼくらの旅は終わってしまって
振り返る こともできやしない
朝
言葉たちが 影のようにしおれてしまう
呟けない新鮮な苦痛
ごらん雪だ!
ふりつもる
光とひかりたちの逢引
静かに もっと静かに
墜ちていく時間の形をながめて
熱い情念の輪を描こう
短剣のように悲しかった
ぼくらの朝と
別れを告げよう
いつでもぼくらは
生きていることしかできないのだから
きみのあたたかい掌に
サマルカンドよりもっと西の国からきた
一羽の小鳥と
言葉を
贈ろう
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