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詩集・1971 --水力学入門-- [ふじたふう詩集]

 

   水力学入門

 

   --まっさおな海沈めている無精卵

      わが誕生日呪われてあれ-- 

 

 ねっとりした夜明けの地図の中から

 かけのぼる

 ぼくらの朝は

 いつも

 かたつむりのような愛撫でいっぱいだった

 唐突に始まる舌たちの乱舞

 しなやかに宙返る舌たちの孤独

 めくるめくような恋のうわさ

 飛んできては突きやぶっていく

 ガラス窓の下

 海に向かって流れる

 活劇の始まり 

 

    Ⅰ 

 迷宮の砂漠をさまよう

 王たちの淫猥さに少年は泣きくずれる 

 

    Ⅱ 

 膨らんでいく死体のなんとあざやかな

 細胞の破壊よ

 (彼女のひまわりは 今日

  三十回 ほどしゃくりあげて

  ピアノの音をうちだしたのです)

 

    Ⅲ

 丸い秘密の前に投げ出されるのは

 いつも

 紅い少女たちの群れ

 (みどり児をあなたにあげましょう)

 

    Ⅳ 

 可愛い顔の人と結婚する

 廻転ブランコ

 (あなたの宇宙は花芯のように

  エンプティを飲み込んでいます) 

 

     Ⅴ

 醗酵しつつある 

 頬骨からのぞくと

 澱粉質の飛行船

 (凍りついたように

  うごけやしないのさ)

 

     Ⅵ

 だからといってどこへ飛ぼうというんだい

 牛なんぞが立ちあがる 

 夜明け

 思い出の方向にしか

 行方不明になれない

 水先案内人(パイロット)よ

 P1070248-1.jpg

 


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